文房具

 日本にいると文房具に困ることはない。町の文房具屋さんに行けば、大抵のものは手に入るし、その種類も非常に多い。また、日本人的なちょっと工夫した文房具なんていうものもあって、購買意欲をくすぐられるものである。

 例えばノート一つ取ってみても、表紙の色やデザイン、罫線の種類や紙質など様々である。中には、わざと罫線を手で書いたようによれよれの線になっているものもある。また、透かしが入っていたり、匂いがするものもある。文房具にそれ程気をつかわない筆者であっても、表紙の色を変えることによって、そのノートに何が書かれているかを簡単に区別できるようにしていた。

 さて、ここは英国、さぞかしおもしろい文房具に出会えるに違いない。と期待してはいけない。英国の文房具は、良く言えば質実剛健、悪く言えば地味、種類が少ない、面白みがない、魅力がない、購買意欲をそそらない、等々辛口批評に困らない。一体、どうおもしろくないのかを得々とご説明しよう。

 まず、研究者が研究をする上で必ずやっていることは、実験ノートの作成である。筆者などは、その日の天気まで書き込むようにしている。というのも、雨の日にはうまくいかない実験というのがあるかも知れないからである(正確には湿度が高いとか、室内が低温になってしまったがためにうまくいかないなどということがある、かも知れない?)。

 で、筆者の周りの人々の実験ノートを調べてみると、なんと2種類しかない。一つは黒のハードカバーのノート、もう一つは研究所で配られる大きめのダイアリーでる。研究所で配られるダイアリーが実験ノートに使われているのはまあ納得いくが、もう一つの選択肢が黒のハードカバーのノートしかないというのは、いったいどういうことかおわかりであろうか。

 そう、売っていないのである。実験ノートは結構ハードに使われるので、ハードカバーのノートを好む人が多い。そうすると、黒のハードカバーのノート以外どこにも売っていないのである(かろうじて背表紙の色だけ青、赤、黒の3色がある)。

 ソフトカバーのノートにしても大して差はない。筆者は、こちらにきて4、5冊のノートを使ったが、いつ買いに行っても同じノートしか見つからず、全く同じノートが実験台の上に並ぶことになってしまった。もちろん、電車の中で勉強している人のノートもすべて同じである。

 個性を重んじる英国で、文房具には個性がない。もちろん、そんなことで個性は育たないかも知れないが、日本の豊富な文房具を知っていると物足りないことこの上ない。聞くところによると、文房具は学校で支給されるものという概念があるため、個人できに購入することが少なく、ゆえに種類も少ないということらしい。

 しかし、もっとも驚いたことは、種類の少なさだけではない。ある品物を探そうとしても見つからないなんてことがざらにあるのである。

 例えば、ホッチキスの針、日本で主流の10号の針はほぼ100%見つからない。もちろん英国でも10号用のホッチキスを売っているのにである(主流はそれより大きいものだが)。ということで、筆者はフランスに買い出しに行ってきた(本当は学会に行ったときたまたま見つけただけだか)。

 それから、研究に書かせないセミログ対数のグラフ用紙。これはどこの文房具屋に聞いても知らないという。おかげで、研究所にあるセミログ対数グラフ用紙を取り合い、いや仲良く分けあっている。

 文房具を例にしたが、ほぼすべての品物に関して、同じようなことがいえるようだ。とにかく種類が少なく、また物によってはなぜこんなものが英国で入手しにくいの?ってことが頻繁に起こるのである。もちろん、セーラースターズの変身グッズが欲しいなんていう無理難題を言っているわけではない(フランスでは手に入るが)。

 関係ないが、日本のアニメのビデオならかなりのものが手に入る。アキラのような筆者でも聞いたことのあるようなものから、デビルマンという懐かしいタイトルや最新の筆者が聞いたこともないようなものまで種類は豊富である(ちなみに英語に吹きかえられている)。こんなものが豊富でも筆者には何の関係もないのに・・・。そう言えば、デビルマンなどのメジャーなアニメは、時々深夜にテレビ放送している。タイトルに引かれて見たなんて事は決して言うまい・・・んっ、思わず書いてしまった。それにしてもゴジラは懐かしかった。

前へ
次へ