感謝を込めて英国から牛丼比較
英国にきた当初は、食べ物の安さに感動したものである。スーパーに行っても大体日本の半値というのが相場だから、同じ食費をつぎ込んだなら日本にいたときの2倍食べられる(そんなあほな)ということに驚嘆したものであった。
例を挙げてみよう。テスコのトマトの水煮缶詰(500g入り)は9ペンスから15ペンス(15円から20円といったところ)である。各種メロンは1ポンド(160円)程度である。その他、肉類の安さも目を引いた。極端な話、肉野菜炒めを作るときには、野菜メインよりも肉メインで作ったほうが材料費が安くつくほどである。
研究所の食堂(学生向け食堂)に行くと、これでもかってほどに肉をたくさん盛られてしまう。日本の学生食堂で、キャベツの千切りが山ほど出てくることがあるが、あれがすべて肉になったと考えてもらえば間違いないだろう。
当然、我が家でも日本ではあまり食べなかった(?)牛肉を毎日のように食するようになったのである。
しかし、世の中はそんなに甘くなかった。そう、狂牛病騒ぎである。今年(1996年)3月の政府公式発表(牛肉とCJDの関連を政府が認めた!)以来、我が家の食卓から、遅まきながら牛肉が消えたのであった。もちろん、いまさら遅いという噂もあるが、取り敢えず牛肉禁止令が引かれて久しい。
さて、そんなことをとある読者(英国見聞録を、まさにパソコンの画面をなめるようにしてすみからすみまで読みつくした方。匿名希望かどうかはわからないが、取り敢えず名前は伏せることにする)に愚痴ったところ、なんとはるばる英国までやってきたのである。本人ではなく、牛肉が。そう、レトルトパック入りの正真正銘英国牛を使っていない牛丼を送ってくださったのだ。
日本では、よくぞここまで薄く切ったなあとか、何と脂身の多い肉なんだといった文句の対象でしかなかったレトルトパック入りの牛丼が、英国で食べると築地の市場近くのすし屋で食べた活きのよい江戸前鮨のような神々しい光を放っていたのであった。
そこで、感謝を込めて(えっ、また送ってもらおうってコンタンだろうって。まあ、否定はしない)、英国から送るレトルトパック牛丼比較を企画したのであった。
今回お送りいただいたのは、グリコの東京牛丼と日本ハムの牛丼である。これ以外の牛丼を知っているかたは、筆者あてに送ってこられても全く差し支えない事を付け加えておこう。
さて、肝心の比較である。まず、日本ハムの牛丼である。これは、製造元が関西であったためか、少々薄味であった(日本ハムが関西むけ薄味を作っているのかは知らないが)。しかし、食べ進めるにつれて、その薄味の原因となっていることに気がつかされたのであった。たれが水っぽいので、ご飯にかけて時にたれが素通りして、すべて丼の下にたまってしまうからである。したがって、意図せずに、後になるほど味が濃くなる連続味覚変身という究極の味のテクニックを使っていたのである。
さて、対する東京牛丼である。こちらの方は、食べた瞬間に十分な味が筆者の口の中に広がったことを正直に話さねばなるまい。食べつづけても味は変わらない。そう、東京牛丼のたれには、程よいとろみがかかっていて、そのためご飯の中にたれがとどまって均一の味をかもし出していたのである。どう考えても意図的に、ゲルろ過的(ビーズサイズはかなり大きいに違いない、ご飯粒だから)味覚保持というテクニックを使ったに違いない。
また、両者の牛肉を比較すると、これは食肉メーカーである日本ハムに軍配があがったことを付け加えておこう。明らかに、ボリュームが違うからである。
さて、総合点で優劣を判断するとどうなるであろうか。個人の好みにもよる上、日本ハムの牛丼の時に、ご飯撹拌法というテクニックを使わなかったために、均一な味を作り出すことができなかったというのは筆者の手落ちであることを考えると、東京牛丼に軍配をあげるのは忍びないかもしれない。
しかし、日本ハムが味の均一さを作り出すテクニックがあることを明記していなかったことをマイナスポイントとして査定するならば、この勝負グリコの東京牛丼の勝ちとさざると得ないだろう。
そう、日本を遠く離れた英国で競われた牛丼対決は、グリコの東京牛丼の小差の判定勝ちとなったのであった。
どこが、英国見聞録なんだよとか、メーカーからの苦情は受け付けていませんのでご了承ください。
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