ロンドンの日本人とその生活−その5−
ロンドンで日本人社会に解け込むためには、いくつかクリアしなければならないことがある。その中でも一番優先順位が高いのがスリの経験である。
もちろん、スリをしたことがあるということではなく、スリの被害を受けたことがあるという意味である。
不幸なことにというべきか、幸いにというべきか、筆者はスリにあった経験がない。どうも、スリから日本人と思われていないようである。あるいは、貧乏人であることが見透かされているのかも知れない。自分では分からないが、体から貧乏人のオーラを発しているのだろう。ということは、スリの被害に合わないコツは、貧乏人たることである。
日本人が集まれば、必ずスリにあったという経験談に花が咲く。が、いまだに未経験の筆者は、疎外感を感じざるをえない。
さて、それはさておき、筆者を除く日本人がいかに頻繁にスリにあっているかを紹介してしまおう。
例その1
町を歩いていたら、「ケチャップがついていますよ」って声をかけられて、それに気を取られているうちに、ズボンのポケットから財布を抜き取られてしまった。被害者いわく、「これは、まさに典型的な手口。盗まれたことよりも、そんな手口に引っ掛かった自分が悔しい」
例その2
ちょっと人気のないところを歩いていたら、後ろから来た人に肩掛けバックをもぎ取られた。バックのひもが肩にかかっていたため、はずみで倒れ怪我をした。被害者いわく「取られるのなら、あっさり取られた方がいいわ。下手に肩にクロスでかけていたら大怪我をしていたかも知れないもの。ガイドブックにしっかりとバックを持てなんてかいてあるのは、危険なだけよ」
例その3
オックスフォードストリートを子供をだっこして歩いていたら、そのこどものおしめを入れておいたバックから、おしめを盗んでいったスリがいた。そのスリいわく「何だこれは。何でこんなもの入れておくんだよ」。そしておしめを盗まれた被害者いわく「日本人でスリにあった人は多いけど、スリに罵られたのは私ぐらいのものよ」
例その4
やはりオックスフォードストリートを歩いていた時に、バックから200ポンド入りの財布を盗まれた。被害者いわく、「カード類は入っていなくて助かったのだけど、その夜に行く予定だったミュージカル・キャッツのチケットが一緒に盗まれてしまったのが悔しい。スリが見ているかも知れないのよ・・・」
いずれも、のどかなコメントである(もちろん、スリにあった直後は、動揺したに違いないが)。一般に、英国のスリや泥棒は命を取ることはないと言われている。そこが、米国の強盗と違うところである。米国では、相手の顔を見てもいけないし一切逆らってもいけない。命に係るからである。そんな違いが、コメントにもでてくるのかも知れない。
それにしても、筆者がスリにあう日は一体いつなのであろうか。もし、このままスリにあうことなく帰国したならば、よほど貧乏なのかよほど用心深くてスリも近づけなかったのかのどちらかということになるのだが・・・。
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