総選挙だ

 すでに英国の将来を左右する今世紀最後の総選挙は終了してしまい、日本のニュースでも結果が報道されてしまっているに違いにない。もちろん、ボストンであろうとも、カリフォルニアであろうとも、イタリアの孤島であろうとも、ワシントンDCであろうとも、はたまたシンガポールであろうとも、同様であろう(他の地区からご覧の方はいらっしゃっただろうか。あっそういえばセントルイスとかベルギーも・・・まあいっか)。

 そこで、英国見聞録風・今世紀最終(?)英国総選挙大騒動顛末記を書いてみたいと思う。日本では、米国の大統領選挙は報道されるが、英国の選挙に関しては結果ぐらいしか報道されていないに違いない。確かに、米国ほどの派手さはない。総選挙が決まってわずか2ヵ月の間に全てが終わってしまうのだから、日本の衆議院の解散総選挙と全く変わりないといっていいいだろう。ん、いや、日本が英国の制度を真似たのだった。

 それでも、この選挙期間中に、日本の選挙では見られないような出来事を垣間見ることができた。その一つが、相手をこき下ろす選挙運動である。米国の選挙戦でも相手方のスキャンダルを暴露することはあるし、政治家としての資質以外の部分で相手を攻撃することもある。それと同じことが、ここ英国の選挙戦でも行われるのである。

 一番最初に話題になったのは、「目」であった。劣勢であった保守党が、躍進する労働党の顔である党首トニー・ブレアの目の部分だけを他人のものと変えたポスターを作って張り出したのだ。その目というのが、見るからに悪党という目であった。労働党党首のイメージダウンを狙ったのである。

 しかし、これが大不評を買い、かえって保守党の人気低下をまねいたともいわれる。面白いのは、その悪党的な目を提供した人(目タレとでも言うのであろうか)が、マスコミに登場して、「こんな悪意に満ちたポスターに自分の目が使われるなんて、事前に聞いていなかった。保守党に文句をいってやる」と息巻いたのである。とはいえ、「目」を提供したものの、状況が悪くなったために、自分の保身のためにポーズを取ったようにしか見えなかったが。

 さて、選挙が近づき、テレビ討論で国民にどちらの党首が優れているかをはっきりさせようという気運が盛り上がったときがあった。これまた、米国でよく行われる手である。ご存じのように、トニー・ブレアは43才と若く、また政策面でジョン・メジャーをうち負かすだけのポリシーを持っているわけでもない。ということは、テレビ討論に応じると、自分の無策振りを全国民にさらけ出すことになりかねない。そこで、ジョン・メジャーが、いくらテレビ討論を呼び掛けても全く応じようとしなかったのである。

 そこで、保守党は、「チキン作戦」にでた。チキンというのは、英語では弱虫という意味を持つ。保守党は、チキンのぬいぐるみを作って、「やーい、やーい。トニー・ブレアの弱虫毛虫」と茶化したのである。しかし、トニー・ブレアはそれでも応じなかった。トニー・ブレアが応じないことによって、国民にとって、保守党は単なる道化師のように映ってしまったのである。

 そもそも、選挙は、始めから労働党の勝利であることは確実であった。その「負け幅」をいかに少なくするかが保守党にとっての懸案であり、そのために様々な手をうってきた。しかし、動けば動くほど、墓穴を掘り傷口を広げてしまった感がある。動かない労働党にとっては、漁夫の利とでもいったところであろうか。

 そして、選挙翌日の新聞にこう載ったのである。

「労働党、地滑り的大勝利」

 そう、保守党が自滅して崩れていったために、一つの負けがどんどん大きくなって大敗を喫してしまったというのだ。労働党が勝ったというよりは、保守党が負けた選挙というところだろうか。どこかの国でも同じようなことがあった気がするが。

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