ユーモアの種類

 筆者は、それ程多くの国の人を知っているわけではない。しかし、あたかも知っているがごとく、今日の話を進めてしまおう。いわゆるお国柄という平均値的人物を仮定して、その国のユーモアの主流を分類してしまおうという大胆不敵な企画である。例えて言うなら、米国の映画にでてくる日本人は、「眼鏡をかけていてカメラを首から下げ団体行動をする」といったものが平均値である(どんぴしゃのタイプはそう多くはないのが現実であるが)が、それと同じ色眼鏡で英国人を見てしまおうということである。ステレオタイプとも言われるいやがられる見方でもある。

 もっとも、明るいのは米国のユーモアである。時としてなんでおかしいのか分からないこともあるが、とにかくお腹の底から笑うことをよしとしているのが米国流の笑いである。また、どんなに深刻な時でも取り敢えず笑いを取ろうとするのも米国式と言えるかもしれない。

 さて、日本の笑いはどうであろうか。伝統的な日本の笑いは、ほのぼのとしたものである。その代表格は、漫画サザエさんである。子供を中心とした生活が生み出す笑いが基本型であろう。

 さて、ここ英国の笑いというのはどういうものであろうか。それは、口の端が引きつるような笑い、ブラックユーモアなのである。例えば、総選挙で敗れた保守党のある議員を皮肉ったものがある。彼が町角で、ホームレスからBig Issueを受け取っている写真(これは選挙前に写したもの)に吹き出しのコメントを入れて、

議員「失業者を助けよう」

ホームレス「うむ、では私があなたからBig Issueを買ってあげよう」

となっているのである。ホームレスまでが、選挙で落選して失業した保守党議員に哀れみをかけているというところが面白いのだ。

 この例に代表されるように、腹の底から笑うというのではなくて、ちょっとブラックな笑いにシニカルに笑ってしまうというところが英国紳士流笑いなのである。口を開けてげらげら笑うなんていうのは、「紳士道」に反することなのかも知れない。

 もう一つ例をあげておこう。地下鉄のドアに書いている注意書である。

「Obstracting the doors can be dangerous」が修正されていて、「Obstracting the doors can be anger us」となっていたのだ。誰かがdangerousのdとoを消したのである。正しい英語ではないにしても、意味はわかるであろう。乗客がドアを手で開けて遅れてくる人を乗せてあげるのが英国紳士のマナー(?)であることに、さすがの地下鉄運転手も怒るかもしれないというのだ。

 しかし、最近は英国流の笑いにも変化が表れてきたらしい。米国流のナンセンスな笑いである。駅の広告にこんなものがあった。

 トースターから、トーストが顔を出しているポスターの下に「Central eating」と書いてあるガス会社の宣伝。もちろん、セントラルヒーティングのことである。これは、日本でいうところの駄洒落であろう。

 また、テレビ番組でもこんなものがあった。

「私の名前って、とっても変なのよ。だってお盆と海っていう名前なんだから。私の名前はtray とsea、そうTracyなの」

 全くのナンセンスギャグである。

 異文化の影響により、英国が培ってきた口引きつらせるユーモアの世界は、消え去っていくのであろうか。

前へ
次へ