らしからぬもの

 突然だか、似つかわしくないものというものがある。フラダンスをする橋本龍太郎、不正を行わない銀行、大活躍する巨人の清原選手など例をあげればきりがない。大人気の英国見聞録なんているもの似つかわしくないし、女性にもてもての筆者なんていうもの似つかわしくない。いや、これはあり得ないこととか、妄想といった類ものであろう。

 しかし、これ程おかしな組み合わせが他にあるだろうか。それは、抗菌商品と英国である。日本では、抗菌商品が売れに売れているらしい。当初は、電話の受話器を簡単に除菌出来るといった目的で除菌スプレーなどが売り出され、きれい好きの日本人に大受けしたらしい。そして、2匹目のドジョウを求めて、抗菌文房具、抗菌まな板などおよそ全てものに抗菌商品が出まわっているといってもいい。

 が、唯一、パソコンには抗菌商品がない。今日のパソコンは、極めて危険な環境におかれているのも関らずである。「当社のパソコンは、完全抗菌処理済みです。絶対にウイルスに感染しません」なんていうパソコンが発売されたら、さぞかし売れるだろうに(ウイルスは細菌ではないって)。

 さて、もともと英国人の衛生への考え方は、日本人のそれとは雲泥の差がある。彼らは、床に食べ物をおくのも平気だし、床に落ちたチョコレートであろうと、拾って食べてしまう人もいる。ちなみに筆者が学生のころ、「3秒ルール」というものがあった。食べ物が床に落ちても、3秒以内に拾えば汚くないから食べてもいいという恐ろしいルールである。そのルールを常に実践していた友人(女性、推定32才)も、今では結婚して子供がいるらしい。「3秒ルール」を子供にも教えているのであろうか。心配である。

 話を戻そう。これらの違いは、家に靴を履いたまま上がるか否かということに起因しているといってもいいかもしれない。日本人は、家の中はきれいに保とうという努力をする。時として、努力が実らない人(一般的には片付け下手といわれる)もいるが、それでも靴のまま家に上がる民族と比べれば、はるかに衛生的であろう。机の上に脚をあげることは行儀が悪いが、靴を履いたまま机の上に脚を上げることに比べたらかわいいものであろう。その机で、食事するのだから、さすが英国人である。きっと、彼らのおなかは丈夫にできているのだろう。

 したがって、日本で抗菌商品が流行っていると聞いたとき、「絶対に英国では流行らないし、売り出されることもない」と確信した筆者であった。

 しかしである。その火星の岩石よりも揺るぎない確信は、サハラ砂漠の砂のようにもろくも崩れ去ったのである。なんと、この英国で抗菌商品なるものが売り出されてしまったのだ。筆者の目に止まったものは、「抗菌シャンプー」である。テレビCMまでやっている。これは、かなり、真剣に売りだそうという腹づもりらしい。

 「抗菌シャンプーでさらさらヘアーの清潔英国人」なんて、誰が望むであろうか。やはり、英国人は、むさくるしく、ちょっと不潔な方がいい。それが伝統というものである。と、勝手なことを考えている筆者は、最近、歯を真っ白にするという歯磨き粉を手に入れた。東幹久と高岡早紀の宣伝で有名なあれである。試してみようかどうしようか。抗菌シャンプーを手に入れた英国人同様の悩みである。

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