キッズコンピューター

 筆者の記憶にかすかに残るぐらい、はるか昔に英国のおもちゃ事情を書きなぐったことがあった。書き綴ったのではなく、書きなぐったと表現するに相応しい文章だったと記憶している。なにせ、本題に入る前に文章が終わってしまった上に、「続きは今度」と言いながら、いつまでたっても続きが来なかったぐらいである。まるで、芸能人同士が「今度食事でもしましょう」というのと同じぐらいいいかげんな話である。

 が、筆者の脳味噌には、わずかばかりだが記憶というものが機能している部分がある。そういえば、記憶つかさどるのは、海馬と呼ばれる領域であるが、きっとそこになんらかの刺激が加わったために、誤動作(本来は忘れ去るはずのものを思い出してしまったという誤動作)してしまったに違いない。とにかく、自分でも信じられないのだが、思い出してしまったのである。そう、続きを書かなければならないことを。

 ということで、あいかわらず能書きが長いが、第222話の続きである。もっとも、第222話を覚えていないからといって、復習する必要はない。筆者の文章は、すべてラビッシュなのだから。

 英国のおもちゃ事情は、ここ1年で急激に変わりつつあると言っていいだろう。もちろん、筆者はそれ以前の事情に詳しいわけではない。しかし、英国のことだから、筆者が英国に来た時にそうだったものは、その10年前もそうだったに違いないとという英国見聞録的帰納法によって、1年以上前とここ1年の間のおもちゃ事情は、かなり違うということが証明されるのである。

 さて、何が違うのだろうか。それまでは、おもちゃというとドールハウスや木製の機関車、高度なものでもブロック程度であったのだが、最近は電子機器が子供のおもちゃとしてお目見えしてきたのだ。

 日本に住んでいらっしゃる方の中には、何を今更とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれない。しかし、英国を甘く見てはいけない。なにせ、ローマ帝国に征服されていたときに整備された下水道施設を、ローマ軍撤退と共に放棄し、もとの原始的生活(糞尿を玄関前に積み上げていたらしい)に戻ったといわれるほど保守的な英国人のことである。日本人が、20年前にインベーダーゲームにうつつを抜かしていたのを尻目に、テディーベアと機関車トーマスで遊び続けてきたとしても何の不思議もないのである。

 が、総選挙で保守党が敗れ、労働党が政権を取ったからには、子供のおもちゃも進歩しなければならない。そこで、キッズコンピューターの類が台頭してきたのである。日本でも、ピコと呼ばれるキッズコンピューターを始め、子供用電子手帳やたまごっちなど、様々な電子おもちゃが売れている。

 それと同様に、英国でも、おもちゃ売り場のもっとも目立つところにキッズコンピューター売り場が登場するようになってきたのだ。売れ行きはどうなのかわからないが、子供達には人気があるようである(もちろん、筆者の娘は日本人であるから、そこに釘付けになる)。例えば、英国では売れないに違いないという大方の予想を裏切ったたまごっちは、現在売り切れ中である。

 どうやら、英国見聞録的帰納法が公理では無くなりつつあるようだ。英国も変化を受け入れる土壌があるらしい。

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