Wall's問題

 本場、伊太利のアイスクリームを食べたものとしては、Wall's問題は、許すことができない大問題である。

 Wall'sというのは、英国最大のアイスクリームメーカーである。英国中どこに行ってもWall'sの看板を見ないことはない。しかし、それほどの大手メーカーであるWall'sが、不正に競争メーカーを排除したと報じられたのである。

 Wall'sは、自社のアイスクリームを売っている販売店には、自社のマーク(下の写真)を掲げさせてきた。



 まあこれはよくある話である。代理店契約みたいなものであろう。消費者もWall'sマークがあれば、安心して買うことができるのであるから、メーカーにも消費者にもメリットがあるというものだ(ただし、消費者が安心するというのは、美味しいアイスクリームが食べられるという意味ではなく、この店なら美味しくないけど慣れ親しんだアイスクリームを味わえるという意味である)。

 話は、違うが、Wall'sというと移動アイスクリーム屋さんが思い浮かぶ。ロンドンに来られたことがある方は、必ずWall'sマークがついた車を見かけたことがあるはずである。それである。この販売は、実によく考えられているらしい。ロンドンの町中なら、観光名所など人が集まりやすいところに車を止めてWall'sマーク入りの旗でもたてておくだけでよい。しかし、郊外にいくとそうはいかない。人が集まるところに、うまいタイミングで行かなければならない。大抵の場合、昼食後か3時のおやつの時間を狙って、子供が集まる公園にやってくるようだ。しかも、一ヶ所にわずか15分程度しか止まっていない。郊外の公園は、人の出入りが激しいわけではないので、その程度の時間で買いたい人は買ってしまうからであろう。まるで、大昔の紙芝居屋さんを見るようである(筆者注:話に聞いただけである。筆者の幼年期には紙芝居屋さんを見掛けることはなかった・・・?)。

 さて、Wall's問題は、次のような事件である。Wall's社の社員が小売店を回り、Wall's社以外のアイスクリームをWall's社製品と一緒の冷凍庫に入れて売っていないかどうかを調べたのである。そして、もしそのようなことがあったら、そのお店にWall's社製品を卸すことを止めるという強行手段を取り始めたというのである。

 似たようなことは日本でもあった。化粧品を安売りする小売り店に対して、メーカーが品物を卸すことを拒否する姿勢を見せたり、価格破壊が起こる前、秋葉原で希望小売価格を大きく下回る価格で売る小売店への締め付けがニュースに流れたことを覚えていらっしゃる方もいることだろう。

 とにかく、とても正当とは思えない理由により、商品の取り引きを停止するというやり方は、許されることではない。

 ただ、小売店の方も対策を怠っていなかった。Wall's社の社員が来るときには、他者のアイスクリームを隠してしまい、Wall's社製品以外は売っていません、というポーズをとるようになったというのだ。まことにささやかな抵抗である。

 さて、公憤からWall's社への怒りをぶつけてきたような話し方をしてきたが、実は、筆者はWall's社のアイスクリームが好きではないという裏事情があったりもする。正直言って美味しくないのだ。バブルがはじけたとはいえ、一時は高級アイスクリームブームとなった日本国からやってきた筆者である。Wall's社ごときのアイスクリームで満足するような生半可な舌をもっているわけがない。だから、他社に頑張ってもらいたいのである。まあ、英国のアイスクリーム・メーカーでは50歩100歩かもしれないが。

 ということで、筆者の家の冷凍庫にはハーゲンダッツ(これが英国で一番美味しいと言われている)が常備されているのであった。

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