トンとは、tonのことである。もちろん、重さの単位であることは、ご理解いただけることと思う。間違っても、狂牛病先進国である英国で唯一安全といわれている豚肉のことではない。ちなみに、英国の鶏卵は、その30%がサルモネラ菌で汚染されていると言われており、生卵を食べる習慣がある日本人泣かせである。卵ご飯、あるいは納豆卵を食べようと思ったら、弾が6発入った拳銃でロシアン・ルーレットをやる以上に危険な確率三分の一というブリティッシュ・ルーレットを行わなければいけないのであるから。
ちなみに、筆者は、このブリティッシュ・ルーレットにチャレンジしたことはあるが、当たりくじ(すなわちトイレとお友達になること)を引いたことはない。これは、ひとえに、筆者のくじ運のなさがなせる技である。宝くじはもちろん、年末の福引きにおいても、残念賞の類以外は当たったことがない。やま勘も当たらないし、懸賞の類も皆無である。運がないというより他にない。まあ、それも他の人に運を譲って、少しは人の役に立っていると思うことで気が紛れるというものだろう。
さて、話を戻そう。tonである。彼らは時に「ton of 〜」という表現を使う。もちろん、たくさんあるという意味であって、実際に重さがtonの単位であるということではない。小錦と曙と武蔵丸が高見山とちゃんこ鍋を食べているような場面でない限り、世の中、そう簡単にtonの単位の重さを身近に感じることはないだろう。
しかし、tonという言葉は、意外と身近に聞くことができる言葉なのである。嫌と言うほどの書類の山を前にして「ton of 書類」と言うこともあるし、たくさんのDNAが精製できたときには、「ton of DNA」ということもある。とにかく、重さに限らず、なんでも大量にあるときに、「ton of 〜」という言葉が出てくるのである。これを日本語に直せば、「100億万の」といった実際にはそういう数はないけど、とにかく多いことを表現するために子供の頃に使った造語になるだろうか。
関係ないが、tonといえば、かつて日本の大手ゴムメーカーの方から、おもしろいことを聞いた。当時、その会社は、バイオテクノロジーの分野に進出し始めていたのだが、なにせそれまで扱っていたのが、ゴムである。DNAとは扱う単位が1000億倍ぐらいは違う。そこで、「DNAって10μgで1万円ぐらいするんだよ」という話をしたところ、「じゃ、1トンもあったら、いったいいくらになるんだ」と工場関係者が目をむいて聞いてきたっていうのである。もちろん、DNAをトンの単位で売ることはできないし、作ることもできないが、もし可能なら、国家予算を上回る額になるであろう。
したがって、DNAがいくらたくさん精製できても、「ton of 〜」ではなく、「mg of 」ぐらいにとどめておくのが常識的といったところだろうか。