フィレンツェまでの道

 前回書き忘れたが、今回の伊太利旅行の目的地は、フィレンツェである。ピサの斜塔で有名なピサ空港へ入り、電車でフィレンツェに移動する。そこで、3泊滞在する一ヶ所滞在型(といっても3泊ではあちこち見てまわれないのでそうせざるをない)である。

 さて、英国から伊太利まで直線を引くとおわかりのように、その途中、フランスとスイス上空を通る。これまでの英国滞在中、海外へ行ったのはフランスだけである。したがって、上空を通過するだけとはいえ、スイス領内(領空)に入るのは初めてであった。機内から眺めるスイスアルプスの山々の山頂は、8月でも雪を頂き、簡単には登頂を許さないぞという威厳を保っている。そこで、筆者は隣にすわっている嫁さんに言った。

「スイスはヨーロッパの中で一番物価が高いんだってさ。だから、うちのような貧乏人が行かれるところではないんだよ。ということで、これで行ったということにしようね」  窓越しにスイスアルプスを眺める嫁さんの目に熱がこもるのも、無理なからぬことであった。

 そう言えば、筆者は、仕事以外の目的で、海外旅行はもちろん飛行機にすら乗ったことがなかった。今回は、仕事抜きの全くの観光である。今や、学生が卒業旅行で海外に行く時代にあって、筆者は初めて純粋に海外旅行に出たのである。

 さて、国際空港とはいえ、ピサ空港は極めて小さい空港である。日本で言えば、徳島空港程度の大きさだろうか。まあ、讃岐うどんの代わりにパスタとピザが売っているところが大きな違いである。

 徳島空港といえば、某有名な先生がこんなことをおっしゃっていた。

「徳島空港前で待っているタクシーの行き先は、市内と大塚製薬の2通りしかない。徳島って何もないからね」

 その某先生がピサ空港に降り立ったならば、同じことをおっしゃったに違いない。出発ロビーと到着ロビーの区別もなく、まさに何もないのである。でも、徳島空港にはにはジャンボジェットが就航していたなあ。ということは、徳島空港よりも田舎ということか。

 気を取り直してフィレンツェ行きの電車のチケットを買い、次の電車がいつ出発するのかを聞くと、1時間以上も先である。なんと、2時間に1本しか電車がないというだ。とても、国際空港とは思えない。この事からも、この空港がいかにローカルな空港であるかがおわかりいただけるだろう。ということは、日本から伊太利にやってくる人が、この空港を使うことはまずないといっていいだろう。日本からの直行便はもちろん、経由便もあるとは思えないからだ。

 この何にもない空港で時間をつぶすには、お茶をするのが一番である。そこで、ピサ空港唯一のカフェへと入ったのだった。

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